2011年10月29日

著作物の引用

先日、私の所属しているビジネスグループのメンバーの方(仮にAさんと呼びます。)から、著作権法についての質問を受けました。
具体的な質問内容はもちろん書けませんが、ご自身の作成されたプレゼン資料に他人の著作物(キャラクター等)を載せることは法的に問題ないか、というものです。そのプレゼン資料を使った講演の受講者は、講演内容を聞く際に、自分の良く知っている著作物(キャラクター等)を例に挙げて説明してもらう方がより具体的に講演で伝えたいことをイメージすることができ、理解を深めることができますよね。そのような狙いで、プレゼン資料に他人の著作物を載せたいのだと思います。

結論から言いますと、この場合は問題ありません。ただ、そのためには条件があり、引用する著作物の出所(出典)をプレゼン資料に明示することが必要になります。

著作権者は、自己の著作物を他人に無断で複製されない権利を有します(複製権、著作権法第21条)。
そして、Aさんがプレゼン資料にその著作権者の著作物を勝手に引用すると、原則としては、その複製権を侵害することになります。

けれども、本来、著作権法というのは文化の発展に寄与することを目的とするものである一方で、文化というのは、先人の作った文化の上に新たなものを積み重ねて行くことで発展するという側面があります。そのため、誰かが創作活動(=文化活動)をする際に他人の著作物を引用することが一切認められないと、文化の発展が止まってしまうことになります。これでは、著作権法の法目的に反してしまいます。

そこで、著作権法では、引用しようとする著作物の出典を明示することを条件として、自己の著作物に他人の著作物を引用することを認めています(著作権法第32条第1項、同第48条第1項第1号)。この場合、引用しようとする著作物の著作権者の許諾を得る必要もありません。けれども、その引用は、引用の目的上、正当な範囲内で行われるものでなくてはなりません。Aさんのプレゼン資料の大部分が他人の著作物の引用となってしまい、自己の創作部分が著しく小さい、なんていうのはダメということですね。

著作物の出典の明示方法ですが、著作権法では「その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により」明示しなければならないとされていますので、引用するメディアによって異なるといえます。例えば、評論文などで誰かの著作物を引用する場合は、引用箇所にカギ括弧を付す等して自己の著作物部分と区別した上で、引用箇所の末尾に著作権者の名前、題号、公表年等を明示することが考えられます。また、プレゼン資料等では、(c)マークとともに、著作権者の名前や公表年等を明示するという方法もあるでしょう。

著作権というのも弁理士の業務の対象となり、弁理士試験の科目に著作権法も挙がっています。
何か疑問があれば、身近な弁理士に質問してみるのもいいですね。
弁理士 前田伸哉
posted by 弁理士 前田 伸哉 at 12:47| Comment(0) | 日記
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